2015年11月2日月曜日

血中のクレアチニンや尿素窒素(BUN)は身体に悪い?-猫の腎不全における2大検査値の評価-

人間でも猫でも腎臓を病むと、まず血液検査で指標とされるのが、クレアチニンBUN(尿素窒素)

腎不全猫をケアする立場からは憎きクレアチニンとBUNですが、結論から言えば、実はこれらは体内では安全なものなのです。

そして、その値は100%腎機能を反映しているわけではないので、見方に注意が必要です。

今回はその体内での生い立ちと検査値の見方を考えたいと思います。



今日もむずかしいね~


クレアチニン


アルギニンが肝臓に運ばれ(クレアチニンではなくクレアチンとなります。クレアチンは筋肉に蓄えられ、充電池のような働きをしています。普段は筋肉を動かすためのエネルギーをためておいていざというときにエネルギーを放出して、またゆとりのある時に充電し、常に充電と放電を繰り返しています。
そのうちの1%程度が日々代謝され、クレアチニンになり、腎臓から排泄されます。
なので、筋肉量が多い人(動物)ほどクレアチンの貯蔵量は多いため、クレアチニンの"産生量"は筋肉量によって決まってきます。
一方、クレアチニンの排泄は腎臓のみで、腎臓の糸球体で濾過され、そのまま排泄されます。
 
通常、体内の老廃物の排泄は主に尿で、一部便や汗などからも排泄されています。その成分によってどのような割合でどこから排泄されるか、おおよそ決まっています。
さらに腎臓に目を向けると、濾過膜(糸球体)で濾過され、一部が濾過後膀胱までの間(尿細管)で再度血管に戻され(再吸収)、排泄量を調節しています。

クレアチニンに関しては排泄経路は腎臓のみで、糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収されず、濾過した分は全量尿中に排泄される特徴を持っています。

この特性を利用し、血中のクレアチニン量を測定することで、腎臓の濾過能力を把握することができます。

しかし、上述の通り、 クレアチニンの産生量は筋肉量に比例するため、その血中濃度は健常人でもマッチョな体格の男性とか細い女性ではかなり開きがありますが、クレアチニン自体は毒ではないのでそのこと自体を気にする必要はないですし、比較もできません。

つまり、うちの猫とよその猫ちゃんの検査値を比較してどちらが腎臓が悪いということは一概には言えないのです。
クレアチニンは一個体の経時的な変化を見て初めて意味のある検査となります。
もちろん、一般的にはあり得ないほど高値であれば、腎臓が悪いことを示します。

また、糸球体は健常時はフルで働いているわけではなく、余力を残して働いています。なので、濾過がうまくいかなくなってきても、少々であれば、残りの予備戦力で闘えるので、軽度の腎不全ではクレアチニン値は上がってきません。

BUN(血中尿素窒素)


体内で消費されたアミノ酸は体にとって有害なアンモニアを作り出します。このアンモニアは肝臓に運ばれ、尿素回路の働きで体にとって安全性の高い尿素に変換されます。
この尿素は腎臓に運ばれ、糸球体で濾過されたのち、尿の濃さと血液の濃さの度合いによって一部血液中に再吸収されます。

しかし、いくら安全な尿素と言っても、その量がBUN換算(検査では尿素分子のうち構成要素の窒素原子のみに着眼して値を出しています。)で80㎎/dlを超えると、食欲不振や悪心、嘔吐が出現すると言われています。

これはいわゆる尿毒症の症状と思われますが、尿素だけで尿毒症を引き起こすわけではなく、尿素も含め、本来腎臓から尿へ排泄されるべき様々な老廃物が異常に血液中に残ってしまうことで複合的に引き起こされていると考えられています。

一方、尿素は消化管出血や悪性腫瘍や大きなやけどなど、体内でたんぱく質が大量に壊されるイベントが発生すると増えますし、尿素を作り出す肝臓の働きが弱まれば、減ってしまいます。
ショックや脱水(腎不全猫で恒常的に見られる脱水とはちょっとニュアンスが違うと思います)など、水分を多く排泄してしまい生命の危機に陥ってしまうような状況でもBUNは上昇します。

つまり、腎臓以外の要素でその値が上下してしまうため、BUNだけの変化で一喜一憂してしまうと、大きな落とし穴に落ちてしまう可能性があります。
BUN値が変動した場合は、他に異常が無いかを複合的に評価していくことが大切です。


以上、腎機能を評価する2大検査値である血清クレアチニンとBUNですが、これらの評価はそれぞれの特性を理解し、検査値を上下させるほかの症状や検査値を合わせてチェックして初めて、意味のある数値となります。

2 件のコメント:

かさにゃろめ さんのコメント...

こんにちは♪

先日からの記事、大変勉強になりました。
血液検査をすると、つい数値の上下に踊らされて
一喜一憂してしまいますが、これからはしっかり
状態を確認しながら、わたしに出来る事をきちんと
していこうと思います。(もちろん数値は大事ですが)

前回の血液検査の結果があまり良くなかったので、
いつまた食べなくなるかとビクビクしていましたが
あまりクヨクヨ考えずに、殿さまと一緒に病気と
向き合おうと思います。 とても勇気が出ました。
ありがとうございます^^
猫さん、便秘が解消されますように。お大事に。



ricoyon さんのコメント...

こんばんは。かさにゃろめさんも銀太君も体調いかがですか?

検査値は脱水の具合とか点滴の量とかによっても変わってくるので、急激な変化以外はあまり気にされない方が良いですよ。
急性期疾患以外は長い目で変化をとらえたほうが良いです。

便秘は相変わらずですが、食欲はまだらながらもあるので、あまり気にしないことにしようと思ってます。飼い主がギスギス感を出すと、100発100中伝わりますからね~。

猫のぬくもりがいとおしい季節になりましたね。お身体にお気をつけてお過ごしください。