2015年11月1日日曜日

腎不全猫の低体温の正体は何か

先日のブログでペットボトルde湯たんぽについて書きましたが、そもそも、なぜ恒温動物であるはずの猫が低体温に悩まされなければならないのか。



まず、第一に考えられるのが、貧血です。
体内で熱を産生するためには酸素が必要で、その酸素を体内隅々にまでいきわたらせるためには赤血球(ヘモグロビン)が必要です。
その赤血球を作るにはエリスロポエチンという造血(赤血球を作る)ホルモンが必要不可欠ですが、これは腎臓でのみ作られるホルモンのため、腎不全になるとホルモン不足で赤血球が作られず、貧血になります(腎性貧血)。

そのほかにも、老化による筋肉量の減少、食事カロリー不足、皮下点滴の水分の影響、血行の悪化(自律神経の影響?)などが影響しているものと考えられています。

そのため、南国マレーシア(室温29℃)においてでも、湯たんぽが必要になるのです。

ずっとタイルに座ってるとお尻から冷えるんだよ~


確かに、タイルにおしりピタっ。冷えるわな~。


そして、もう一つ、低体温には大きな要因があるようです。
それがアルギニン不足

アルギニンは猫ではタウリンとともに必須アミノ酸と位置付けられています。
しかし、腎不全になるとこのアルギニンが腎臓で作られなくなってしまうため、 体外から補う必要があります。


アルギニンはアミノ酸の一種で、体内で次のような働きを担っています。
  • 身体のたんぱく質の構成
  • 体内で発生した有害なアンモニアを尿素に変換する尿素回路(オルニチン回路)の一ファクター
  • 筋肉を作るクレアチンの素となる
  • 血管内皮細胞で一酸化窒素を作る
  • 赤血球を作るのに必要

特に、肉食動物の猫にとってはたくさん摂取したアミノ酸の分解産物であるアンモニアの無毒化(=尿素を作る)は非常に重要で、猫は絶食の後アルギニンの含まれていない餌を食べると、2時間で急性アンモニア中毒の症状を呈するという報告もあります。

今回注目したいのは、一酸化窒素の存在です。
一酸化窒素とは体内各所でアルギニンより作られるシグナル伝達物質で、その中でも血管内皮細胞で産生されたものは、血管の拡張を起こします。
これは全身の血流をアップさせ、血圧を下げ、身体をぽかぽかにしたり、腎臓で濾過に関与する血管を広げることで、濾過にかかる圧力を減らし、糸球体を保護する働きがあると考えられています。
この一酸化窒素は腎不全ではアルギニンの産生不足により、十分に作られていません。腎不全の実験系でアルギニンを投与すると、血流の改善や血圧の効果などがみられるようになります。

しかし、上述のアルギニンの実験はほとんどが注射で血液に直接投与した場合の結果であり、実際にサプリ等で口から摂取する場合は他の多くの物質と同様に、肝臓で一部代謝(効果が無い物質に変換)されてしまうので、人間において実際に食品に添加し、実験を行うと思っているような結果が得られないことがわかりました。

ここで注目されたのが、アルギニンと関連のあるシトルリンです。
シトルリンはアミノ酸でありながら、たんぱく質の構成には使われない特殊なアミノ酸で、体内で化学反応を助けるのが主な働きとなります。
また、口から摂取してもアルギニンのように代謝を受けないため、効率よくその力を発揮します。
シトルリンは尿素回路でも、アルギニンから一酸化窒素を作る過程でも関与する重要な物質で、このシトルリンをアルギニンに添加して口から摂取すると、体内各所でシトルリンがアルギニンに変換され、 アルギニンの効果が十分に得られることがわかりました。

さらに、このシトルリンはアルギニンに比べ、毒性が低く、口からの投与に適していることがわかっています。

こんな夢のようなシトルリン/アルギニンですが、シトルリンがリウマチ患者で病状を悪化させたり、アルギニンより作られた一酸化窒素が多すぎると、かえって腎機能を悪化させてしまう病態があったりするため、慎重に摂取する必要があります。
また、体内でどのくらいシトルリン/アルギニンが必要であるか明らかになっていないため、サプリによっても配合量が違っています。

人間の摂取についても通販サイトの口コミ等で効果の実感度合いについて賛否いろいろな意見がある状態ですので、猫への投与は人間以上に熟考が必要と思います。


昨日の摂食量

昨日は便意があるものの出ず、スッキリしない一日だったため、摂食量は少なめ。
少し強制でアシストしました。

ドライ(自力)4g、ウェット(強制)17mL、飲水量9mL(誤差?)、皮下点滴130mL

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