読むと長いので、最初にまとめをしておきます。
今日の言いたいこと
- 慢性腎不全は状態を表す言葉で、病気そのものを示しているわけではない。
- BUNやクレアチニン値が高くなってしまっているということは、原因にかかわらず、腎臓がダメージを受けていることを示している。
- 腎臓は主に濾過を行う糸球体と濾過したものから体に必要なものを血液に戻す尿細管から成り立っている。
- 腎不全では糸球体も尿細管も傷んでしまっていることが多い。
- 腎臓には腎内の血液量を独自にコントロール仕組みを持っており、その仕組みの影響で、BUNやクレアチニンが高値を示す。
- 腎臓では赤血球を作るのに必要なエリスロポエチンや循環をコントロールするために必要なアルギニンを産生しているが、腎不全ではその産生がうまくいかない。
- 腎臓のダメージは不可逆的で、治療は対症療法となる。
難しい。。。退屈だ~~
詳細
慢性腎不全は多飲多尿、嘔吐で気づいて病院に行くと、すでにBUN、クレアチニンが治療が必要なほど高くなっているということが多いです。
うちもそうでした。
特に猫はひどくなるまで具合が悪い様子を見せないので、飼い主もなかなか気づけません。
最初に病院に行った時には脱水がひどくて、採血も何とかできるくらいひどい状態になっていました。
慢性腎不全というのは「腎臓が働いていない」ということを大雑把に表現しているだけで、その実態を示す病名はいろいろとあります。
これは人間と同じです。
ただ、人間と違って原因をつきとめるような厳格な検査を行わず、原因がわからないことも多いです。
ただ言えるのは、BUNやクレアチニンが高値になるような状態になってしまっているということは、糸球体も尿細管もダメージを受けてしまっているということです。
腎臓の濾過機能はたくさんの糸球体で分担して機能していますが、一度ダメージを受けてしまうとその糸球体は通常では通さないようなたんぱく質を透過させてしまったり、逆に何もかもうまく濾過を行えなくなってしまったり、機能を果たせなくなってしまいます。
そして、その働けなくなってしまった糸球体の分も他の残された糸球体が無理をしてでも働かなければいけないので、腎臓は悪くなり始めると、加速度的に悪くなっていきます。
濾過された水分は通常、尿細管を通って膀胱へ向かう間に、周りを廻っている血管に水分や体に必要な物質のみを選択して戻すのですが、腎不全で少ない糸球体で大量に濾過された水分を戻しきれず、そのまま尿に出してしまうため、多尿になってしまいます。
そのうち、尿細管も疲弊してしまい、その機能をうまく果たせないようになってしまうため、腎臓の働きはますます悪くなってしまうのです。
また、腎臓の濾過機能の部分につながっている血管は体の状態に引きずられないように濾過機能を果たすため、その流入/流出の圧力を独自で調節する機能を持っているのですが、腎不全になって少ない糸球体にたくさんの血流がやってくると、その径を狭めて濾過量を減らそうとしてしまいます。これが血液中の老廃物を濾過する能力を低下させてしまうため、血液検査をするとBUNやクレアチニンが上昇してしまう原因となります。
腎臓では赤血球を作るのに必要なエリスロポエチンや血管を拡張する一酸化窒素を作るアルギニンが合成されますが、腎機能の低下とともに、その産生量が少なくなってしまうため、貧血や血圧の上昇を引き起こします。
これらにより、赤血球による全身の酸素運搬量が減ったり、血流が悪くなってしまうため、循環不全・低体温の一因となってしまうと考えられます。
実際にアルギニンの投与により、腎血流量の改善や、全身循環の改善につながり、血圧が下がったり、腎不全の付随症状が改善されることが報告されています。
(ただし、腎血流量が増すことで、糸球体への負荷は高まるため、全面的に良いとは言い切れない場合もあります)
慢性的に長い時間をかけてダメージを受けた糸球体や尿細管を、元に戻すのは難しく、腎不全の治療は対症療法が中心となります。
つまり、血圧が高ければ降圧剤、脱水が起これば水分の補充(輸液など)、カリウムが低ければカリウム製剤、ヘモグロビンや赤血球が少なければエリスロポエチン、便秘が起これば便秘対策。。。。できるだけ、腎臓を傷めないように、全身への影響を最小限にするように進めていきます。
これを命ある限り続けていくことになります。
次回は調べていて気になったアルギニンについてまとめていこうと思います。
ヘビーな内容が続きますが、お付き合いいただければありがたいです。
昨日の摂食量
ドライ(自力)36g、飲水量:計測不能、皮下点滴135mL
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